(13日,スーチー氏, レパダウン銅山) 調査結果を住民に直接説明会
【バンコク春日孝之】
ミャンマー中部の銅山開発を巡る反対運動を巡り、野党指導者アウンサンスーチー氏が委員長を務める調査委員会は「開発継続」を認める 報告書を公表した。事業は軍系企業と中国の合弁で、報告書は「開発中止は外国投資を冷え込ませる」と指摘し、国益に配慮した。民主化勢力が加勢する反対派 は「住民軽視だ」と抗議行動を再開する意向で、矢面に立った格好のスーチー氏に対し風当たりが強まる可能性がある。
反対運動は、レパダウン銅山の一部住民が昨年6月、土地収用への「補償金が不十分」として始めた。この動きに僧侶を含む民主化活動家が合流し、開発中止 を求める運動に発展。治安部隊は11月、開発予定地を「占拠」した反対派数百人をガス弾を使い強制排除、多数の負傷者が出た。
このためテインセイン政権の要請でスーチー氏をトップとする調査委員会が発足。11日公表された報告書は「地元住民への適切な補償と雇用機会の提供が必 要だ」と問題点を指摘しつつ「開発は中国の利益というより国益にかなう」と強調。「開発の一方的な中止は中国との関係に悪影響を与え、外国企業がこの国へ の投資に関心を失うことにもつながる」と懸念を示した。
反対派は、治安部隊が強制排除の際に「深刻なやけどを負う白リン弾を使った」と非難していたが、報告書はこの事実を認めながら、反対運動は「地元と無関 係な組織の扇動で広がった」と指摘した。また、反対派が主張する「環境影響」についても「大きな影響はない」と否定した。
銅山開発の契約は、親中国政策を続けた軍政期の2010年に結ばれており、契約も反対派の強制排除も「中国への配慮では」との指摘がある。スーチー氏は 12日、取材に「中国や軍が問題のメーンではない。調査委は、この国の将来を考慮した。そのためには軍と国民の和解も必要で、反対派こそなぜ抗議するのか を熟慮すべきだ」と自制を求めた。
スーチー氏に対しては西部ラカイン州での宗教対立や北部カチン州での政府軍と武装組織の戦闘を巡り「静観しているだけだ」と国内外から批判がある。国際 人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのロバートソン氏(アジア局長代理)は「ノーベル平和賞受賞者というより二流政治家」と酷評している。
だが、急進的な活動家とは一線を画し、国家指導者を目指して大局的かつ現実的に判断できる政治家に脱皮してきたと評価する声も少なくない。スーチー氏は13日、銅山に足を運び、調査結果を住民に直接説明する。
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