
写真; Yahooブログ
ミャンマーでもスマートフォンブームが到来していた。
同国の最大都市ヤンゴンでは、スマートフォンに見入っている人にそこらじゅうで出くわす。露店で賑わうダウンタウンでは多くのモバイルフォ ン販売露店が立ち並んでいるのだが、主流製品は完全にスマフォに変わっている。多くの人が群がり(高齢の僧侶も加わっていた)、スマフォ談義で盛り上がっ ている。街角ではスマフォを見ながら歩いている若者や、スマフォを囲んで楽しそうに話し合っている人もよく見かけた。観光名所であるシェエダゴォン・パ ヤー(仏塔)では、少年僧侶が仏像などをスマフォで撮りまくっていた。環状線の列車に乗った時も、隣に座っていた若者がスマフォで音楽を聴いており、ミャ ンマーでも大人気の「ガンナム・スタイル」の曲が漏れ聞こえた。 こうした光景は世界中で当たり前になってきているが、ことミャンマーでも繰り広げられているとは驚いた。ミャンマーは1人当たりのGDPが 800ドル程度の非常に貧しい国である。その上、長い軍政下で事実上の鎖国状態が続き多くの規制が敷かれてきただけに、インターネットの普及が世界で最も 遅れている国の一つになっていた。ということで先週からのミャンマーの旅も、インターネット生活から解放されることを楽しみしようとしたのだが・・・。
ところがヤンゴンに着いてから冒頭での光景を目にすると、その背景を知りたくなってしまう。そこで空港からホテルまでの案内をしてくれた現 地の旅行会社スタッフに聞いてみた。そのスタッフは「友人がスマフォでアングリーバードのゲームなどを楽しんでいるのを見て、私も早く購入したい。スマ フォは少し前まで600,000kチャット(6万円)もしていたが、この1年間で半分の約300,000kチャット(3万円)近くまで値下がっているの で、手に届くようになってきた」と話す。また、このスマフォブームに火を付けてくれたのはクリントン女史のお陰だとも明かす。「2011年12月に訪れた ヒラリー・クリントン米国務長官が現政権と会談した後に、ミャンマー政府が海外とのネット接続を開放し、スマフォ・サービスが初めて自由に使えるように なった」。
1年ほど前までスマフォンを見かけなかったのに、今や自由化のシンボル的な存在になって多くの人が目を輝かせてスマフォに群がっているの だ。フェイスブックやツイッターも自由に使える。音楽、ゲーム、QQ(チャット)、Skypeあたりが人気アプリとなっている。それにデジカメとして利用 している光景もよく見かけた。製品はやはりサムソン製が多い。
インターネットの利用デバイスも、主流はパソコンではなくてスマフォになっているという。パソコンはスマフォより高価なこともあって、パソ コン・インターネットをパスする流れが定着してきている。インドで今年5月にモバイル・インターネットのトラフィックがパソコン・インターネットのトラ フィックを追い抜き話題になったが、1人当たりのGDPが低い発展途上国ではこの傾向が顕著となろう。特にヤンマーではインターネットが少し前までほとん ど利用されていなかっただけに、スマフォが飛躍台となってインターネット人口を押し上げようとしている。そしてインターネット人口の大半がスマフォユー ザーとなっていきそう。
そこでミャンマーのインターネット人口をInternet World Stats(<a href="http://www.internetworldstats.com/stats3.htm#asia" target="_blank">Internet Usage in Asia</a>)で調べてみた。
ASIA INTERNET USE, POPULATION DATA AND FACEBOOK STATISTICS
ただ、こうした物理的なインターネットインフラは徐々に整備されていくはずだが、最大の問題はインターネット利用に関して規制が課せられる のではないかとの不安である。欧米からの圧力により、渋々ながらも民主化が進み、合わせてインターネット利用も幸いにも開放されてきた。確かに現段階では フェイスブックやツイッターも自由に使える。ところが心配した予感通り最近、ソーシャルメディアや未登録端末の利用を禁止する新テレコム法が提出された。 まだ新法は議会を通っていないが、成立するとフェイスブックやツイッターのようなソーシャルメディアがミャンマーでは使えなくなりそう。また Renesysがインターネット遮断を実施するリスクの高い国やテロリストをリストアップしていたが、その中にはシリア、リビアなどと共にミャンマーも挙 げられている。スマートフォンによる自由なインターネット利用が民主化の動きを象徴しているだけに、新テレコム法の行方を注視すべきである。
田中 善一郎 IT/メディアジャーナリスト
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